
ビートルズ・ブートレッグ55年目の真実
Section 11 (セクション11) 「O.P.D.」
ブルー・スタンプ「KUM BACK」(775)についてもっと掘り下げる前に「O.P.D.」→(KB05)について紹介しておきたいと思う。セクション1と3にて少し触れたが、「O.P.D.」は1969 年 9 月 20 日にニューヨーク州バッファローの WKBWによって放送された音源が収録され、それは「KUM BACK」とは全く別の音源から作られている。
カバーはホワイト・カバーに赤のスタンプ押し、「O.P.D.」という文字のみ押されている。
ディスク・レーベルもホワイトで何も記載がない、形状はセンター・ホールを中心に33mmの円形ステップであった。


マトリックスの12952の前に記号のようなマークは手書きではなく刻印されており非常に特徴的である。(このマークはtulipと表す、このマトリックスの詳細に関しては後のセクションで説明する)また、最初にある2文字はQWかOW、あるいは@Wにもみえる、定かではないがこれも大きな特徴である。(注:以降最初の2文字はQWに統一する)詳細→(KB05)
Matrix: QW LIPSON A/B [tulip] 12958
「O.P.D.」はもっとも初期に制作されたブートレッグの一つではあるが、広く知られることなく、コピー盤も作られることがなかったのである。セクション1で触れたように1993年にリリースされた「Posters, Incense And Strobe Candles」のライナー・ノーツにこのタイトルが紹介されていた。その後1995年に発刊されたDoug Sulpy著の書籍にジャケットの白黒写真と若干のデータが載ったが、1990年代に入った時点でもこの程度の情報しか明らかにされなかったということは、いかにレア盤であるかを物語っている。

Doulg Sulpy氏による「The 910's Guide To The Beatle's Outakes」(1995)
そのため音源の詳細に関してはなかなか公に紹介されることは無かった、1990年代に入ってもCDを含めコピー盤が作られる事も無かったからである。
一方で2003年、「WKBW
Exclusive」というブートレッグのCD-Rが作られた。この音は現在ウェブ上や、いわゆるコレクターズCDによって聞くことが出来るが、これは同WKBW放送の当時のリスナーによるホーム・レコーディングによるものだ。そのためDJの声も収録されているので、この受信録音からわかることは「KUM
BACK」のWBCNの音とは段違いのモノラルの貧弱な音で放送され、実際の放送では曲の再生中、何度も音にかぶせてDJの声が入っていたことだった。ブートレッグLP「O.P.D.」にはDJの声は入っていないことからも、放送のためのマスター音源でから作られていたことがわかった。また音質が悪いながらGet
Backのエンディングの部分やDig
It!の4分57秒のバージョンなどのこのブートレッグでしか聞くことのできない編集があり貴重な音源であることも分かった。ちなみにこの編集はCompilation2と呼ばれ、1969年5月頃の編集ではないかと言われている。ただこの編集の確かな記録は残っておらず、どのような形でWKBWが入手したかは不明であり、いまもって「O.P.D.」はミステリアスなブートレッグと言える。
「O.P.D.」はこのネーミングからある憶測が流れた。それはビートルズ初のブートレッグは「KUM BACK」ではなくこの「O.P.D.」がではないかというものだ。
「O.P.D.」というネーミングはポール死亡説の中で出てくるサージェント・ペパーズの写真にある、ポールの腕章の話からきていると考えられるのだが、ポール死亡説は1969年の9月から起こり、1969年11月の「LIFE」誌のインタビュー記事をもって終結する。そのため「KUM BACK」は以前より1969年末から1970年初頭のリリースではないかと言われてきたのに対し、「O.P.D.」とタイトルされたということは1969年9月から11月までに作られたブートレッグではないかというわけである。
しかし「O.P.D.」のリリースに関しては情報が皆無で、確たる証拠となる手掛かりは全く無い。
前述の通りマトリクスにある記号のようなマークは非常に特徴的ではあったのだが・・・。 この後のセクションでその真相に迫りたい。