
ビートルズ・ブートレッグ55年目の真実
Review 05 Dawn Of Our Innocence
「Dawn Of Our Innocence」(詳細→DAWN01)は、Side Aに1965年8月14日(放送は9月12日)のエド・サリヴァン・ショー出演時のライブ、Side Bには1965年8月15日のシェア・スタジアムでのライブを収録したブートレッグである。
1970年7月9日号No.62のRolling Stone誌には「LIVE BEATLES」というタイトルでレビューされた。(おそらくフロント・スリックがついていないものを入手したのだと思われる)
その時期より判断すると同年6月頃に制作されたブートレッグと推測されるが、Side A/Bどちらもブートレッグに収録された音源としては初めてのものだった。
1970年という時期から考えると、60年代中にどちらもテレビよりライン録音したものと考えられるが、特に特筆すべきはSide Aのエド・サリヴァン・ショーであろう、最初から最後まで非常に安定した良好な音質で収録されている。

後にエド・サリヴァン・ショーが収録されたブートレッグでは、1973年のCBMによる「Peace Of Mind」がポピュラーだが、どうも「Peace Of Mind」はWCFによる「BATTLE」の「24X X」というマトリックスのレコードから(参照→BAT1 / BAT2)コピーされたようである。このソースとDAWN01とは、そもそも異なる録音で、別のマスターが使用されているようだ。「24X X」の音質はDAWN01ほど良くはないが、「Peace Of Mind」よりは優れた音質である。
「BATTLE」 にはシェア・スタジアムのライブを収録したタイプ(BAT1)と2種類あり混乱しがちだ。定かではないが、「24X X」で使用された録音はWCFオリジナルのマスターであり、1970年か1971年にすでにリリースされていた可能性がある。


詳細→BAT2 「BATTLE」ではBeatlesのライブを収録したSide2の内容が2種類の異なるマトリックスで確認されている。こちらのマトリックスは 「24X X」で1965年のエド・サリバン・ショーが収録されている。
1973年の「Peace Of Mind」は「24X X」のプレートからコピーしたと思われる
また、ちなみにCBMの「L.S. Bumble Bee」に収録された「Yesterday」はどうもこのDAWN01からコピーされたもののようで「BATTLE」
や「Peace Of Mind」の音質とは異なる。
Side Bにおけるシェア・スタジアムでのライブでも音質の良さについて同じことが言える。後に登場するWCF盤やTMOQ盤の印象が強いが、ここに収録されている音はそれらよりもクリアである。
(音質だけを比べると、「Last Live Show (TVC盤→SHEA01)」よりもこの「Dawn Of Our Innocence」のほうが良い)
ただ、DAWN01は大変残念なことに非常に盤質が悪い。貴重な2つの音源を収録したにもかかわらず、常にパチパチノイズを含んだ音となってしまった。
さらにシェア・スタジアムのライブでは「Act Naturally」と「I'm down」が入っていないことと、1曲ごとにフェイド・イン、フェイド・アウトしてしまう。そういったことから、後に登場するWCF盤に注目が集まってしまうのは致し方なかったのかもしれない。

数年後の1973年頃、このDAWN01からコピーし作られたのが日本製ブートレッグOG596(DAWN03)であった。
DAWN01の盤質が悪くノイズを多く含んでいる音はうまく処理され、気にならない程度のノイズとなっており、出力も上げているが、オリジナルに比べるとクリアな音質ではない。 オリジナルのフロント・インサートでは上部のタイトル「Dawn Of Our Innocence」が上の部分が欠けているが、このOGでは手書きで付け足している。
DAWN01 はあまりプレスされなかったようだ。そのためかDAWN03の方がポピュラーになってしまったが、その日本製DAWN03も海外のファンには縁遠いものだった。特に1965年のエド・サリバン・ショーの音源に関して付け加えて言うと、70年代中盤にMelvin Recordsが製作した「The 1964 And 1965 Ed Sullivan Shows」によって、新たに良い音質で登場したものの、これまた簡単に手に入るレコードではなかった。1980年頃に「Recovered Tracks」というブートレッグに収録されたものも、またもや「Peace Of Mind」からのコピーであった。実に1984年の「Conquer America」まで良い音質で、手に入れやすいものは無かったのである。

写真は左から
「The 1964 And 1965 Ed Sullivan Shows」
「Recovered Tracks」
「Conquer America」