ビートルズ・ブートレッグ55年目の真実

デッカ・テープス 総論

(Outline of "Decca Tapes")

                                                            セクション 9      最大規模の強制捜査

        Section 9     Raid by FBI and the largest sound recording seizure


  1979年はブートレッグ業界において、過渡期だったのかもしれない。大きな出来事がいくつか起こっている。そしてそれらは少なからず「The Decca Tapes」の発売に影響しているのである。

           なかでも最大の事件は6月に起こった。

    それはFBIによるLAで史上かつてないくらいの大規模押収と言われた、Vicky Vinylへの強制捜査だった。6月8日と9日、FBIは2日間にわたりVickyの倉庫を強制捜査、ブートレッグやスタンパーなど押収物は計12トンにのぼったという。

   そして、7月にはCBSとブルース・スプリング・スティーンはVickyら4人を相手取り民事訴訟を起こした。この裁判では途中、Wizardoが証言台に立つこともあった。裁判の結果は1980年の末に下されることになる。裁判所はVickyに約5億円の支払いを命じた。この大きな出来事は少なからず、他のブートレッガーへ影響があった。

   強制捜査で押収されたタイトルにはよく知られているポピュラーなものが多数あった。1979年7月23日のビルボード誌は6月の件を伝えているが、具体的に押収されたレコード・タイトルとしてRolling stonesの「Summer Romance」Beatlesの「Indian Rope trick」そしてEric Claptonの「Snowhead」、また加えてLed Zeppelinによるタイトル不明のものが含まれていたと伝えている。

作る側と売る側の規模は縮小を余儀なくされた。おそらく西海岸のブートレッガー達は戦々恐々としていたはずである。

 その後ビルボード誌は、1979年7月27日に追加の報道記事を掲載、また1980年12月27日の記事では判決の内容とそれに関する一連の裁判の経過、証言録等部分的に伝えている。

↓写真 「Rolling stones / Summer Romance」、1978年の3か所でのライブを収録してあるが、これは1979年4月29日にFM放送された、K.B.F.H.(キング・ビスケット・フラワー・アワー)が音源となっている。上段はオリジナル、1stプレス。一説によるとマーケットに出荷されたものは400枚程度。ビルボード誌の記事からすると6月の押収で、プレスされた大半のレコードだけではなくマザー・プレート(Matrix: RS 1100)も押収されてしまったようである。(▼下へつづく)

↑(▲続き)1979年中に、同じ音源が新しいブートレッグ「Lacerated」(中段)というタイトルで登場した。当然、スタンパーは新しくなった(Z-108)。1980年になると「Summer Romance」は復活した(下段)。しかし、カバーはオリジナルからの複写で、バックのデザインも一部変わった。マトリックスをみるとスタンパーは「Lacerated」と同一マザーから新たに作られたものだった。

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左は1979年7月23日のビルボード誌。6月のFBIによる強制捜査がLAでは最大規模の録音物押収だったと伝えている。

右は1980年12月27日のビルボード誌の記事。いくつかの裁判中の証言録についてと、裁判所はVickyに約5億円の支払いを命じたことなどを伝えている。


 当時の記事の中ではVicky Vinylは実名で伝えられ、既知の事実だが「Idle Mind Production」の名で事業を行っていたと伝えている。そして、1979年6月における12トンの押収物の中には 26,000 枚の LP が含まれており、ブルース・スプリングスティーンのブートレッグが大部分を占め、全体の20% であったという。

 そして記事の中では押収物の内容のほか、Vickyが使用していた、レコード・プラントの「L」について触れ、FBIは「L」のオフィス・マネージャーへの事情聴取をおこない、プラント内からも約1000枚のレコードと19枚のスタンパーを押収したという。

 当然ながら他にも証言録やFBIの報告はあるのだが、特にジャケット制作に関する記載を見ると、Vickyがある人物(記事中には実名)に「David Bowie / The Thin White Duke」LPのジャケット2,500枚とRamonesのジャケット1,500枚を注文したという事実、そしてまた別の人物は「Vickyからの注文を受け『Winterland 1978のジャケットを6,190枚印刷した」と証言したという事実が書かれている。(注:Ramonesのブートレッグは「At Your Birthday Party」のことと思われる)


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上段:「David Bowie / The Thin White Duke」

        1stプレスはIdle Mind Productionレーベル

下段:Ramones / At Your Birthday Party」

  Side 1/2は Wizardo 500番台のリイシュー(WRMB516)

これらカバー製作をしたブートレッガーのデザインには大きな特徴がある。アーティストの写真や、アーティストと直接関係ある写真は使用しないのである。ここではあえて掘り下げないが、実はこのブートレッガーは1970年より西海岸におけるブートレッグのカバー/ジャケット製作に関わってきた。

 そして「Winterland 1978」はVickyが製作・販売を行ったことが明らかになっている4枚のBruce Springsteenのブートレッグのうちの一つであり、他のタイトルには「FIRE」「E-Ticket」「Pièce De Résistance」があること、他のアーティストでは、チープ・トリックの1978年6月にボストンのパラダイス劇場とニューヨークのボトムライン劇場で行われたコンサートの音源から作られていたものがあったと伝えている。(注:「Cheap Trick / California Man」のことで間違いないと思われる)

← 写真 「Bruce Springsteen / Live In The Promised Land」(14th, Dec 1978  / San Francisco 、Winterlandでのライブ)

一説によると、強制捜査とCBSが起こした訴訟の直接のきっかけになったという。文章中の「Winterland 1978」の最初のプレスである。最初の450セットがBOXに入り限定Noが付き、このタイトルで発売された。それ以降は「Winterland 1978」のタイトル・カバーで出荷された。

↑写真 「Bruce Springsteen / Pièce De Résistance」19th, Sep 1978 / Capitol Theatre, New Jersey でのライブ、3枚組BOXセット。             

                  「Cheap Trick / California Man」 写真 →

本文中にもあるようにThe Paradise Theatre, Boston / 10th, June  」  及び、「Bottom Line, New York / 12th, June 」の1978年6月における2つのライブから収録している

↑写真 Bruce Springsteenの2枚

上段:「FIRE」FIRE WAXと言われている、レーベルの貼られていないレッド・マーブル。下段:「E-Ticket」

 レコード・プラントの件もさることながら、複数のジャケット印刷に携わった人物の名があげられ、FBIが聴取していたということはVicky以外のブートレッガーたちも、とりわけ西海岸においては大っぴらな活動はできなくなったはずである。

 彼らは従来の方法・ルートでの活動は止め、活動することをやめるか、あるいは縮小し、他の方法を模索することを余儀なくされたのである。

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