
ビートルズ・ブートレッグ55年目の真実
デッカ・テープス 総論
(Outline of "Decca Tapes")
セクション 10 ピクチャー・レコード・ブーム
Section 10 The Booming of Picture Disc
最初にマーケットに出回ったCircuit盤「Decca Tapes」はピクチャー盤であったが、当初よりピクチャー盤にする計画ではなかったようである。セクション8で触れたように1979年ライナー・ノーツを書くことを第三者に依頼している。ということは、当初は通常のジャケットタイプを計画したはずである。またPODレーベル盤でのプレスが確認されているにもかかわらず(詳細→1979年 Circuit Decca Tapes の背景)、Untold Storyが印刷されたデラックス・カバー盤の前にピクチャー盤がプレスされたということは急遽、ピクチャー盤のプレスに切り替えた印象を受ける。
おそらく、その背景にはピクチャー盤ブームがあったからであろう。
1978年より世界的に広がりを見せたピクチャー・レコード・ブームは1979年になってブートレッグ業界にも及んだ。1978年「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」のオフィシャル・ピクチャー・レコードが発売され話題を呼び、その後を追って「Abbey Road」も発売された。(日本盤「Abbey Road」は1979年発売)

↑オフィシャルのピクチャー・レコード「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」と「Abbey Road」
(写真→)1978年11月雑誌に掲載された某レコード・ショップの広告。当時のピクチャー・レコードに対する過熱ぶりがわかるが、予約を往復ハガキでとは・・!?

このピクチャー・レコード・ブームが続く中、1979年の終わり頃には、ついにブートレッグ史上初めてのピクチャー・レコードがプレスされた。それはImage Disc Inc. というレーベルが製作したものだが、1970年代にWCF、あるいはBerkeleyと名乗った東海岸のレーベルが、過去に使用した同一のスタンパーを使い、リプレスしたものだった。それは3アーティスト、6タイトルであったが、そのうち3タイトルがBeatlesであった。



The Grateful Dead / Live At The Felt Forum
The Rolling Stones / Liver Than You'll Ever Be
Led Zeppelin / B.B.C. Concert (マトリックスはPQ-202)
←写真 「The Grateful Dead / Live At The Felt Forum」(Matrix: 101 A/B) 下段はWCF時代のオリジナル・プレス。
WCFのブートの中でもマトリックスが機械による刻印というレアなケース。レコード番号の101-A/Bは「Last Live Show」(SHEA02)の番号と同一。
←写真
「The Rolling Stones / Liver Than You'll Ever Be 」(Matrix:4045 A / 4054 B) 下段はWCF時代のオリジナル・プレス。
↓写真
「Led Zeppelin / B.B.C. Concert」
(Matrix: PQ-202-A/B )
マトリックスからすると、このオリジナル盤は「Royal Albert Hall '71」というタイトルのブートと思われる。

Image Disc Inc.が発売した6タイトルは、限定1000枚のプレスで通常のブートレッグよりも高い金額で販売された。この発売に影響を受け、Circuit Recordsはピクチャー盤のプレスへとシフトしたと考えられる。


←写真
1980年音楽専科1月号に掲載された広告。
広告の内容から1979年末に発売された号とわかるが、右上に「Sweet Apple Trax」のピクチャー盤がリストされている。
そして左上から3番目に「ABBEY ROAD NW3」のタイトルがある。
←写真
こちらは音楽専科1980年2月号の同じショップの広告。
左下にはズラリとImage Disc盤の写真が掲載された。価格は1枚5800円。
また右上の写真から上記1月号でリストされていた「ABBEY ROAD NW3」は日本製コピー盤であると確認できる。
つまり当時ほとんど入荷しなかったと言われた「No.3 Abbey Road NW8」だったが、1979年末には日本製コピー盤が発売されていたのである。

また、あまり知られていないが、西海岸では1979年中にClashの「Klashing With The Clash」のピクチャー盤も作られていた可能性があり、それはCircuit Recordsと同一ブートレッガーと思われるのである。
←写真
「The Clash / Klashing With The Clash」(Matrix: K-100 A/B) FM放送された1979年9月21日のN.Y.でのライブが収録されており、1979年中にプレスされたブートレッグ・ピクチャー・レコードの可能性がある。
そして、Image Discのピクチャー・レコードと「The Decca Tapes」が発火点となり、以降ブートレッグ業界ではピクチャー盤ブームが起きる。1980年以降はピクチャー盤ブートレッグのリリースは当たり前のものとなった。
ブートレッグのリリースは、頻繁に同タイトルのピクチャー盤が通常のブラック盤の前後でプレスされるようになった。しかしそれはピクチャー盤と通常盤のどちらも買わせる商法でもあった。また、過去の人気タイトルを別ブートレッガーがピクチャー盤でリイシューするような現象もみられ、こういった現象はおさまることなく、1980年代末ごろまで続いた。