ビートルズ・ブートレッグ55年目の真実

デッカ・テープス 総論

(Outline of "Decca Tapes")

 

セクション14 「複雑で、歪な関係性」 

Section 14 Complicated Relationship

セクション 12 では 『Rock'N'Road』と『 NO.3 Abbey Road NW8』、つまりJoe Pope 氏とP氏(Wizardoグループ)、セクション13では 「In Person – Sam Houston Coliseum」と「Live From The Sam Houston Colosseum」、つまりTobe MiloのMilo氏とP氏における関係性について触れた。

 私はこれらの事実を知った時点で、おそらくはJoe Pope 氏とP氏の間にもちょっとしたトラブルが1979年に勃発したのではないかと想像した。ところが、1976年から彼らの足取り、関係性を詳しく見ていくと、考えてもみなかった結果に至った。そしてそれは、3者の複雑で歪な関係性であり、そうした奇妙なベクトルよる力学がDecca Tapesリリースにも影響していた。


                                                         L.A. MARRIOTT HOTEL(マリオット・ホテル)

 3者の間に何があったのか、時系列でたどってみると最初のポイントは1976年11月であった。少なくともここに最初の接点があった。この接点は彼らの関係のスタートポイントであり、70年代後半のビートルズ・ブートレッグの大きな流れとなった。

 1976年にTobe Miloは結成され、最初の彼らのリリースは「Get Together!」(4Q1-2)だった。「セクション 11  Mr. Audifönと呼ばれた男 」で紹介した「the 910」1991年(Oct/Nov)Vol.1での「Tobe Milo Archives」において「『Get Together!』の最初のプレス100枚はブラック盤でのプレスで1976年11月26日のロサンゼルスで開催されたBeatlesfestにおいて、主にコンベンションに参加したコレクターに販売された」とある。

写真↑ 「Get Together! (EP Black, ToMi02)」最初のプレス100枚はブラック盤でのプレス。1976年11月のロサンゼルス、マリオット・ホテル(Marriott Hotel)で開催されたBeatlesfestにおいて主にコレクターへ販売された。「Beatlefest 1976」写真→

 この記述にはハッとさせられた。というのも「セクション9 最大規模の強制捜査」の資料に目を通していた時、そこで目にしたひとつの事実を思い出したからである。

  1980年12月27日のビルボード誌の記事中には、Vickyの裁判における証言録がいくつか掲載されているのだが、その中にFBIが1976年11月にロス・アンジェルス マリオット・ホテル(Marriott Hotel)で行われたBeatlefestに潜入し、Vicky Vinyl(記事中では本名)が自分名義のブースを持っているという事実を知り、そのブース内をチェックしたところ数百枚のブートレッグがストックされていた事実を証言したと書かれていたことだった。

 1976年11月L.Aでの Beatlefestは、確かに26日から28日の3日間マリオット・ホテル(Marriott Hotel)にて開催された。(写真参照) そこでVicky Vinylは自身のブースでブートレッグを販売し、別の場所ではTobe Miloが「Get Together!」を売っていたというわけである。彼らがお互いの面識を持たなかったはずはない。

 事実、翌年1977年の初頭にはWizardoグループとMilo氏は、早速ビジネス関係を構築していた。Milo氏側からはEP盤「Twekenham Jams」(TW1)が、Wizardoグループ側からはEP盤「Watching Rainbows」(WR1)がほぼ同時期にリリースされ、それらには、いわゆるNugraテープが大元となった同一のマスター・テープから数曲ずつ収録されたが、それらの収録曲が重複しないよう配慮されていた。


←写真 

上段はマルチ・カラーでプレスされた「Watching Rainbows」(WR1

下段はグリーン・カラーでプレスされた

「Twekenham Jams」(TW1


 4月にはJoe Pope氏側よりSFF(Strawberry Fileds Forever)No.24Flexi盤(SFF1)が送付され、年末にはNo.27Flexi盤(SFF2)がクリスマス前に送付された。この間Tobe Milo側からは、Television Out-Takes(3月)そしてStudio Outtakes(8月)がリリースされるが、Wizardo側からはPaul Simon & George Harrison "Live From New York..."(Death 352, GePa1/2)When Everybody Comes To Town(Death529,WE1/2)などがリリースされた。そしてWhen Everybody Comes To Town(Death529)には「Get Together!(PRO 4Q1)」からディスク・コピーされたトラックが収録されたが、1976年の「サタデー・ナイト・ライブ」に関しては、SFFNo.24に使用された同一マスターから収録された。(つまりJoe Pope氏側からWizardoグループ側へのテープ提供があったと考えられる

写真↑ 上段はSFF(Strawberry Fields Forever)No.24 Flexi盤 (SFF1)、下段はTobe Milo Productionによる「Television Out-Takes」と「Studio Outtakes」(どちらも未リスト)

写真↑ 上段は「Paul Simon & George Harrison "Live From New York..." 」と「LIVE!Paul Simon & George Harrison 」(Death 352, GePa1/2)、下段はWhen Everybody Comes To Town 」(Death 529, WE1/2

  年末のSFFNo.27とほぼ同時期にWizardo側からは「Indian Rope trick」(IR01)がリリースされる。「Indian Rope trick」にはSFFNo.24と同一マスターから「Spiritual Regeneration」と「Happy Birthday」および、「Fool On The Hill」と 「I Am The Walrus」が収録された。(ここで、再度Joe Pope氏側からWizardoグループ側へのテープ提供があった。詳細は→IR02を参照)

 しかし、翌年の1978年の「20x4」(Twe01)においては、Tobe Milo側からのマスターテープ提供と思われる、「Candle Burns (Peace Of Mind)」、「My Carnival」(The Best Of Tobe Milo Productions, ToMi01から)、そして「When Everybody Comes To Town - I'd Have You Anytime」が収録され、一方でSFFNo.27からのディスク・コピーが6曲あった。(収録曲の詳細は→Twe03 / Twe04 / Twe06 / Twe08 / Twe11  を参照)


←写真 

上段は「Indian Rope Trick」(1977年末)とThe Best Of Tobe Milo Productions」(1978年春) IR01 / ToMi01

下段は「20x4」(1978年5月頃) 

 1stプレス (Twe01 )とリイシューのデラックス・カバー・タイプ(Twe03 )

収録曲の詳細は以下を参照

IR02 / Twe03 / Twe04 / Twe06 / Twe08 / Twe11

ToMi01


 その後、1978年8月以降はWizardoグループのP氏とTobe MiloのMilo氏との間には、Sam Houstonライブのマスター・テープを巡って、Tobe Milo側からP氏へマスター・テープの供与があり、さらには「セクション13」に書いたようないきさつへと繋がっていくのである。

 これら事実からだけだと、Wizardoというメジャー・ブートレッガーへのテープ提供によって彼らの良いビジネス関係のバランスができていたようにも思えるが、歪とも思える彼らの関係性もある。

例えばそれはSFFNo.27に掲載されたブートレッガーへのメッセージである。


←写真 SFF No.27 Flexi盤とニューズ・レター

SFF2

下段はニューズ・レター冒頭に書かれたブートレッガーへ宛てられたメッセージ

  Joe Pope 氏は先に紹介した1977年12月発送のSFFNo.27のFlexi盤発送において、同梱された会員への手紙には冒頭で次のようなコメントを載せているのである。

(Note to Bootleggers: When you hear this, you will undoubtedly run to the nearest record pressing plant with dollar-signs in your eyes. And you'll put this material on the lumpiest, flimsiest vinyl you can find intending to sell it for $7.00. Well... please remember that this is Christmas...and we gave it away...).

(Note to Everyone Else: Think that'll bother their consciences? We don't think so either.). We've decided to wait until next issue to release the new Deccagone. That'll give some people a chance to catch up But also, it'll give everyone more of a chance to enjoy this record! So please enjoy it!!!

Smile Away, Joe

(海賊盤業者の皆様へ:これを聴いたら、きっとドルマークに目が釘付けになりながら、最寄りのレコードプレス工場に駆け込むでしょう。そして、この音源を、見つけられる限りのゴツゴツとした薄いビニールに詰め込み、7ドルで売ろうとするでしょう。まあ…どうか覚えておいてください、今日はクリスマスです…そして、私たちはそれを無料で配布したのですから…)。

(その他の皆様へ:彼らの良心が痛むと思いますか?私たちもそうは思いません。)新しいDeccagoneのリリースは次号まで待つことにしました。そうすれば、一部の方々には追いつく機会が与えられますし、同時に、このレコードをより多くの人が楽しめる機会にもなります!どうぞお楽しみください!!! ジョーより、笑顔で 」

(注:「Smile Away」はポールのアルバム「ラム」に収録された曲。「笑ってごまかす」あるいは「笑い飛ばす」の意味がある)

 このメッセージはかなり意外なものだ。アメリカや日本のビートルズ・ファン・クラブの数多くの会報に目を通してきたが、会報の冒頭で海賊盤業者にメッセージを送るなど通常ではありえない。しかも、海賊盤業者へのメッセージの後に、「その他の皆様へ」ときている。ふつうは、会員へのメッセージが先ではなかろうか?

 もう一つ気になった点は、Pope氏から海賊盤業者へこういったメッセージを送っていること自体、違和感がある。なぜなら、この時点でPope氏も「How Do You Do It?/ Revolution」や「Royal Command」、「Deccagone」シリーズのブートレッグを製作・販売していた身だからである。そして、ここで彼が言うブートレッガーとは、この時点で4枚のDeccagoneをコピーした、WizardoグループとSmilin'Earsのことを指しているはずであり、前述の通りWizardoグループとは既にマスター・テープを供与するなどの関係があったのもかかわらず、このような皮肉なメッセージを送るというのは、彼らに対する否定的行動であり、自分のポジション(立ち位置)とは違うと言いたげに思えるのである。

 また同様に、会員へのメッセージの中で、Deccagoneのリリースを延長することに決めたと伝えているのだが、会員側からすると当初の話とは違い、Pope氏側の勝手な予定変更で、それを正当化しているように聞こえたはずである。このような独善的な一面がこの後の逆転劇を生む一要因となった印象を受けるのである。

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