
ビートルズ・ブートレッグ55年目の真実
デッカ・テープス 総論
(Outline of "Decca Tapes")
セクション17 「アセテート盤の音源」
Section 17 (Source Of Acetate)
セクション2 では最も初期にブートレッグに収録された、デッカ・オーディション・テープの曲として、CBMの「L.S. Bumble Bee」(1972-73年)の「Love Of The Loved」を紹介したが、この音源はいったいどこから来たのだろうか?
少なくともJoe Pope氏そしてWizardoグループが入手したマスター・テープとは時期がまったく異なっており、「Love Of The Loved」 1曲のみの収録であったことを考えると、こちらのマスターは別のものと考えるのが自然であろう。
セクション3 で触れたビートルズがスチュアート・サトクリフの友人に渡したテープといった可能性も考えられるが、近年になって「Love Of The Loved」にはアセテート盤が存在しており、それが音源であったという説が有力視されている。
簡単に「Love Of The Loved」がブートレッグに収録された流れを時系列的に説明すると、最初に1972(73)年、CBMの「L.S. Bumble Bee」(未リスト)に収録された。この「Love Of The Loved」はかなり貧弱な音であった。後に、このCBM盤からのディスク・コピーがWizardoによる「Original Audition Tape Circa 1962」(WRMB308, 未リスト)に収録されたのだが、実は1974年にMelvinが「Their Greatest Unreleased」(MM01、未リスト)にCBM盤よりは良い音質で収録していた。しかしながら、Melvin盤は極小プレスで、そういった事実が明らかになったのも後になってからだった。

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左:「21」(MM02、未リスト)
右:「Original Audition Tape Circa 1962」(WRMB308, 未リスト)
1975年になるとMelvinからリリースされた「21」(MM02、未リスト)に再度収録されたのだが、その臨場感は「MM01」のものとは異なっており、マスタリングをやり直した可能性が高い。とはいっても、まだ音質は悪く、フェイドインやフェイドアウトによって完全収録されたものではなかった。
ところが、1975年から76年の間に、比較的良好な音質で完全収録されたものが登場した。それはのシングル盤(Decas03)のブートレッグだった。このシングル盤はSideA/B面共に同じ「Love Of The Loved」が収録されているのだが、別マスタリングのバージョンが収録されている。
SideAのバージョンはややピッチが速い、SideBに収録されたものは高音が強調されたマスタリングで、MM01に収録されたものに似ている。この違いを考慮すると、入手したマスター・テープが2種類あったため、両サイドに収録したとと考えるほうが良いかもしれない。
ちなみもう一枚のシングル盤ブート(Decas04)や、Wizardoの「How Do You Do It」(WRMB381, 未リスト)に収録されたものは、このシングル盤のB面よりコピーされている。また、70年代中頃プレスされたブートレッグ「Scraps」(Regen Records , 未リスト) にはこのA面のバージョンが収録された。
1970年代と80年代では「Love Of The Loved」のアセテートが存在について、写真など確認のとれる情報は皆無であった。
アセテート盤説が有力視されるようになったのは、2012年の某ウェブ・サイトでのオークションにて、「Love Of The Loved」のアセテートが出品されたことによる。出品されたアセテートには「Emidisc」レーベルが貼られてあり、その他の情報などからも偽物(Fake品)ではなく、本物である可能性が高いとの評価を受けた。
そしてその直後(2012年)、Unicorn Recordsというレーベルから「Early Years 1962-1966(UC-164)」というタイトルのCDにそのアセテート盤音源が収録された。

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左:2012年発売CD「Early Years 1962-1966(UC-164)」
右:アナログ盤「Acetates Vol. 3(AR 047)」(Ace1)
下段写真はそれぞれのバック・カバーにおける「Love Of The Loved」に関する記載
また、2019年にイタリアのレーベルから発売されたアナログ盤「Acetates Vol. 3(AR 047)」(Ace1)にも収録された。バック・カバーには収録曲のもととなったアセテート盤ディスク・レーベルの写真が掲載されている。ただこの写真は他のウェブ・サイトに掲載されているものと同じなので、実際にこのメーカーが入手しディスク・コピーしたという証拠にはならないともいえる。
そのため現時点で(アセテート盤音源である)確証はないものの、これら新しく登場した音を聞く限り、やはりDeccagoneシングル・シリーズやCircuit盤のものとはちがい、「L.S Bumble Bee」及び、これらシングル盤(Decs03/ Decs4)の音に近いと思えるのである。

