ビートルズ・ブートレッグ 55年目の真実

Review 01 :  As Well As Abbey Road とFrom Session To Session

As Well As Abbey Road(AWA01)とFrom Session To Session(FST01)はともに1983年にAlternative Recording Companyというヨーロッパのブートレッガーによって製作された。注:( )内の通し番号は当ウェブ・サイトにおける独自の整理番号です。

As Well As Abbey Road   → 詳細データ     From Session To Session   → 詳細データ

 当時はまだデラックス・カラー・カバーのブートレッグは少数であったため、ファンからは目を引くものがあった。 しかし内容的にはどちらも期待外れだった感が強い。

As Well As Abbey Roadは1979年リリースの「No.3 Abbey Road NW8」(AR 8-69)からのコピーであり明らかな音質の劣化があった。またFrom Session To SessionはJohn Lennonの「ROOTS」、バッド・フィンガーのバージョンに加え、1970年代に発売されたSweet Apple Traxなど、既発のブートレッグからの寄せ集めであった。ブートレッグ・レビュー本「Fixing A Hole」には「SESSIONS」への興味・関心を利用して作られたとあるが、確かに1983年という時期は「Abbey Road Show」が行われ、ビートルズ・ファンの間では未発表曲アルバム「SESSIONS」の噂と期待が高まりつつある状況であった。ファンの興味を誘ったソング・リストは裏切られた結果になった。

1984年のBeatlefan(Vol.6 No5)にはAs Well As Abbey Roadのレビューが掲載されたが、「買うよりオリジナルのNo.3 Abbey Road NW8を探した方がよいだろう」という、やはり低評価のコメントとなっている。

 このブートレッグを制作したAlternative Recording Companyは1983年年頃よりヨーロッパで人気の高いアーティスト中心にリリースしてきており、GENESIS、POLICE、YES、AC/DC、PETER GABRIELといったアーティストのライブ・ブートレッグをリリースしてきた。それらマテリアルは主にイタリアやフランスなどでのライブ録音したものであるため、イタリアまたはフランス製という説もあるのだが、「The Game Over」(ARC0077)というタイトルのブートレッグはMARILLIONという1979年にイギリスのバッキンガムシャー州アリスベリーで結成されたバンドのブートレッグで、本国イギリス以外ではあまり知られていないバンドであることから、Alternative Recording Companyはイギリスのブートレッグ・レーベルである可能性が高い。 Alternative Recording Companyがリリースしたブートレッグのバックカバーには「Artwork by GNUVO」と印刷されていることが多い。GNUVOなる人物はそもそも1970年代TAKRLによるタイトルのカバーデザインを手がけた。またWizardoによる「Nanker Phelge – Schoolboy Blues b/w Andrew's Blues」(Rolling Stones)も彼によるものだと言われており、以後ヨーロッパに渡ったらしい。

Peter Gabriel : Across The River(上段はカバーとレーベル)、下段はバック・カバーのクレジットとマトリックス。

 上の写真はAlternative Recording Company から同じ1983年にリリースされたPeter Gabrielの「Across The River」(ARC LP 0073)だが、やはりカバー・アートはGNUVOによるものだ。この盤を含めAlternative Recording Companyのプレス枚数は500枚と書かれているタイトルが多く、実際一回のプレス枚数はその程度の様である。しかしビートルズの2タイトルにはそのような明記は無いのでもっとプレスされている可能性があるのと、特にこれら2タイトルは後述する白黒の小さめのフロントスリックでリイシューされ、それらは日本でも多数出回った。


リイシュー・プレス

As Well As Abbey Road(AWA02)/ From Session To Session(FST02)

From Session To Session(FST03)

リイシュープレス盤はすべて、オリジナルのスタンパーでプレスされている。As Well As Abbey Roadは通常のブラック盤にホワイトレーベル。From Session To Sessionのイエローのカラー・ビニール盤でやはりホワイト・レーベルだった。

As Well As Abbey Road → 詳細データ

 From Session To Session → 詳細データ






さらにFrom Session To Sessionはレッド・カラー盤も存在しているがこちらはレアである。ディスク・レーベルはWildcatとプリントされたレーベル。

Wildcatというレーベルは1980年代中期よりDavid Bowie, The AlarmやThe Smithなど、イギリスのアーティストのブートレッグをリリースしている。

参考データ:David Bowie(Wildcat/BOW-1)は3曲入りのコンパクト盤。

Track List:John I'm Only Dancing (Again) / Sorrow / Changes

ブルーやイエローなどのカラー盤でプレスされた。カバーはカラー印刷だが折り返しのある簡易タイプ、中には白黒のインサートが入っており、限定ナンバーがスタンプされている。

参考データ:The Alerm(Wildcat/matrix C BAY 02

Track List :  Unsafe Building /  Up For Murder

こちらはレッド・カラーでプレスされたシングル盤。

つまりはAlternative Recording CompanyとWildcatはイギリスの同一ブートレッガーであろうと推測できるのである。

1980年以降ブートレッグの中心はアメリカからヨーロッパあるいは日本へと移行していった。今回紹介したブートレッグもそういった大きな流れの中で出現したブートレッグ・レーベルによるものだったと言える。

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