ビートルズ・ブートレッグ55年目の真実

Review 08       "Silver" and "The Silver Album Of The Worlds Greatest"

「Silver」に関しては古くから多くの書籍等に掲載されてきたが、音質が悪いためなのか、または重要性に乏しいという評価からなのか、敬遠される傾向にあるようで、World's Greatest 盤 に関してはそこそこ知られていたものの、オリジナル盤に関して詳細な部分まで言及されたことは無かった。実は「KUM BACK」と状況は似ており後発のWorld's Greatest 盤により複雑にさせてしまった感はある。

 まず、タイトルの「Silver」について説明すると、オリジナルの「Silver」にはタイトルやナンバーなど、表記されているものは何も無い。1970年2月18日付のChicago Tribune紙には、ある記者がニューヨークからのレポートとして、「何も情報が記載されていないシンプルな銀色のカバーで『The Silver Wonder』とディーラーから呼ばれている」と紹介する記事が掲載されたが、これが「Silver」と呼ばれた最初であるかもしれない。

 一方、オリジナルの「Silver」をもとに作られたWorld's Greatest 盤においては、ディスク・レーベルに「The Silver Album Of The Worlds Greatest」とタイトルがプリントされたが、「SILVER」とだけスタンプされたカバーも見つかっている。このウェブ・サイトではオリジナル盤を「Silver」と呼ぶことにし、World's Greatest 盤 はディスク・レーベルにプリントされた通り「The Silver Album Of The Worlds Greatest」と呼ぶことにした。   

 バリエーションは「KUM BACK」同様にWorld's Greatest盤によって、複雑となってしまった。マトリックスから分類した方がわかりやすいと思うので、最初にマトリックスの違いを説明し、後でタイプ分けしたい。

マトリックスの違い

オリジナルのマトリックスは1種類しかない、それに対しWorld's Greatest盤は2種類ある。

写真上段 タイプA:オリジナル盤のマトリックス、写真中段と下段はWorld's Greatest 盤のマトリックス、

中段のタイプをB-1、下段のタイプをB-2とする

 これらマトリックスの違いを簡単に説明すると、まずオリジナル盤の「A」とWorld's Greatest盤の「B」とでは、「JARRIS」と「0020」間隔に差がある。「A」では間隔が狭く、「B」では離れている。

 次にWorld's Greatest盤「B-1」と「B-2」の違いだが、Side Aでは「JARRIS」の「S」の形に、そしてSide Bでは数字の「2」の形に着目すると違いがわかる。


オリジナル盤「Silver」

 以下、Silv1~4はオリジナル盤のバリエーション。つまりマトリックスはすべて「A」のタイプ。

 前述の通り、オリジナル盤の(何も表記のない)「Silver」は1970年2月中旬ごろにニューヨークとその近辺で出回った。ジャケットが鏡のように反射するタイプである。ディスク・レーベルはホワイトで、特に昔の78回転のレコードで使用されていたような、小さいサイズのレーベルが貼られている。バリエーションの一つ、Silv1ではSide 2のセンター・サークル付近には、一部欠けた円形のような膨隆が認められる。

 ↑ 写真上段はSilv1→詳細 下段はSilv2(livedoor-Blogにはリストしていない)

Silv2のカバーはSilv1と同じだが、WCFが「LET IT BE - LIVE」で使用するスリックが付いていた。 レーベルの形状は、Side 2にSilv1同様の膨隆が認められるが、ホワイト・レーベルは通常のサイズである。

↑ 写真上段はSilv3(livedoor-Blogにはリストしていない)下段はSilv4→詳細

 Silv3の仕様はSilv1とほとんど同じだが、Side2の膨隆が無いという違いがある。ディスク・レーベルの形状が異なるため別のプレスと考えた。Silv4も同じマトリックス「A」ではあるが、カバーは反射しないタイプの銀色ジャケットが使用されている。このタイプではSide1のレーベルの形状が2つのステップがあるタイプとなり、これまた別のプレスと思われる。


World's Greatest 盤「The Silver Album Of The Worlds Greatest」

 World's Greatest 盤のバリエーションSilv5~8まではすべて同じディスク・レーベルが貼られている。また銀色ジャケットはすべて、反射しないタイプである。

 下の写真はB-1タイプ・マトリックスのSilv5とSilv6である。

 ↑ 写真上段はSilv5 下段はSilv6 詳細は→Silv5/6

Silv5は反射のないタイプの銀色カバー。Silv6ではホワイト・ジャケットに「SILVER」と赤いスタンプが押されている。

次に、下の写真はB-2タイプ・マトリックスのSilv7とSilv8である。

↑ 写真上段はSilv7 下段はSilv8 詳細は→Silv7/8

Silv7は反射のないタイプの銀色カバー。Silv8ではホワイト・ジャケットに「SILVER」と赤いスタンプが押され、「LET IT BE - LIVE」のスリックが付いていた。このスリックはSilv2に付いていたものとまったく同じである。スリックに関してはオリジナル盤についてもそうだが、どの条件で付けられたかは全く不明。付いていないほうが大多数である。

収録内容

 「Silver」に収録されたすべてのトラックはモノラルであり、中には正規盤テイクも含まれているが、それすら音質の悪いモノラルである。トラック・リストはマトリックス「A」も「B」も同じだが、その内容は異なる。

 トラック・リストは次の通り。

          Side A

          1 Don't Let Me Down
          2 Dig A Pony
          3 Get Back
          4 For You Blue
          5 Two Of Us

Side B

1 Dig It
2 Let It Be
3 The Long And Winding Road
4 One After 909
5 Across the universe 

1. オリジナル盤(マトリックスが「A」のタイプ)収録内容

 A1と3、B5は正規盤からのコピーはであるが、B5のピッチは速く、サウンドも単純な正規盤からのコピーとは思えないのだが、ここでは正規盤バージョン以外の収録曲についてのみ言及したい。

 A2、4、5及びB1、2、3、4の元となっている音源は「O.P.D.」と同一である。しかし、「O.P.D.」からコピーされたものではない。実は「O.P.D.」も音質的に良いものではなく、やはりモノラル(片方のチャンネルのみ)であるうえに、音の揺れや出力の強弱が不安定であったりする。

 この7曲に該当する、「Silver」の曲と「O.P.D.」を比較すると、音質そのものは「Silver」のほうが劣っていて、曲の前後がカットされているなど欠点は多いのだが、「O.P.D.」における音の揺れや不安定部分が「Silver」には認められない。そして、「Silver」イコライジングなどの編集を施しているようである、例えば「For You Blue」では一部リバーブがかかっているパートもある。また「Let It Be」のイントロ部分では、「O.P.D.」「Silver」ともに盤起こし(アセテート盤であろう)のスクラッチ・ノイズを拾っているが、特に「Silver」のほうが強調されてしまっている。

 「Dig It!」では「O.P.D.」にみられる音の揺れや、出力の不安定が無い分「Silver」ほうが良く聞こえる。ただエンディングのパートは「O.P.D.」のほうが長く収録されている。

 推測すると、両者のマスターとなった大元は同じであるが、どちらも別ルートへのダビング・コピーが少なくとも1回以上あったと思われ、そのコピーのプロセスでできた違いではなかろうか。つまり流出ルートは複数あったということだろう。

2. World's Greatest Records盤(マトリックスが「B」のタイプ)収録内容

 「KUM BACK」がそうだったからなのか、この「Silver Album Of The World's Greatest」もオリジナル盤からの完全コピーと思われがちだが、厳密にいえば収録ソースは同一ではないのと、コピーの上に編集がなされている。

 A-1,3,5では、オリジナル盤(マトリックス「A」)の曲とは別のソースに差し替えられている、そのうちA5に関しては、間違いなくWorld's Greatest盤の「KUM BACK」収録のものと同じである。

 A-2、4及びSide Bのすべてはオリジナル盤(マトリックス「A」)からのコピーではあるが、明らかに編集を施した箇所がある。例えば、オリジナル盤のA-2ではリードギターのパートで音が途切れる部分があるが、つないで消してある。またB-4において、「run to the station」のところで音が途切れそうになるくらい揺れる箇所があるが、切ってつないで編集してある。

 当然のことながら、オリジナル盤からのコピーされた曲は、さらに音質が劣っている。

 最後に、World's Greatest 盤の「B-1」と「B-2」の違いだが、Side Aを比較すると「B-2」のほうが出力は大きい、逆にSide Bでは「B-1」のほうが大きい、その他の部分では特に違いは確認できなかった。

「KUM BACK」のWorld's Greatest盤は片方のみのチャンネルからのコピーという、ずさんな作業をした印象があるが、一方こちらでは、なぜ(あまり意味のない)手間のかかる作業をしたのか不思議でならない。

     当サイトに掲載されているコンテンツ(写真、文章など)を無断で使用、複製等することを禁止させていただきます。

              ( No Unauthorized Reproduction of this content.

Powered by Webnode Cookie
無料でホームページを作成しよう! このサイトはWebnodeで作成されました。 あなたも無料で自分で作成してみませんか? さあ、はじめよう