
ビートルズ・ブートレッグ55年目の真実
Section 5 (セクション5 ) レッド・スタンプ「KUM BACK」
このセクションではレッド・スタンプ「KUM BACK」にフォーカスしその特徴と詳細をまとめてみた。さらに、ディスク・レーベルに意外な文字列を発見した事実を紹介したい。
レッド・スタンプ「KUM BACK」はどちらかというと薄い紙質のホワイトカバーに入っており、やや縦長の、正確にはレッドというよりワインレッドのスタンプが押されている。


マトリクスは「15 side 1 95 / 15 # 2 95」
Side 2にある「2」は「2e」とも読める記号のような文字で、Side 1と2共に離れた場所にかなり小さい字で「95」という数字が認められる。
ディスク・レーベルの形状は約1mm幅の円形溝があり、センター・ホールを中心に円形溝の直径は72mm(外側)となっている。セクション2で触れた通り、音質は良いがやや速いピッチで収録されている。
複数のレッド・スタンプ「KUM BACK」をチェックしてみたが、レーベルの紙質に多少の違いがあり、赤みがかっているものが多いが、一方でそうではなく普通に白であるものもあった。
何度かチェックを繰り返していると、ある時にひとつのレーベルに文字が写っていることに気づいた。
早速文字列が写っているレーベルを写真に撮り、パソコン上で拡大し見てみる。
この時点では文字列は鏡に写ったように逆になっているので、画像ソフトを使い反転させる。そしてコントラストや明るさを変え文字が読み取りやすいようにしてみた。
すると、「PRODUCED BY HENNING & CHEADLE INC. DETROIT」と書かれていることがわかった。

上段:レーベルに写っている文字列
(この時点では読み取れない)
中段:パソコン上で画像ソフトを使い
文字列を左右反転させた状態
下段:さらにコントラストなどを調整すると
文字列が浮かび上がった。
「PRODUCED BY HENNING & CHEADLE INC. DETROIT」
と読み取ることができた
そしてこの「HENNING & CHEADLE」がどのような会社なのかを調べてみると、1947年に創立されたマーケティングなどをを行う株式会社であり、後に会社名は変わるが、ミシガン州デトロイトに本社があることがわかった。業務内容は幅広く、マーケティングをはじめとし、広告や商業取引なども行っていたようだ。しかしこの時点ではレーベルに写りこんだものは何のためのレコードであるかなどまったく見当がつかなかった。いろいろ調べてみたもののこの作業は頓挫してしまいそれ以上のことはわからなかった。
しかし、1~2年が過ぎ、偶然にもアメリカのオート・パーツを売るウェブ・サイトでこれにそっくりのレコード・レーベルに印刷された文字列を発見したのである。
どうやらこのレコードは有名な自動車メーカーのFord社がHENNING & CHEADLE社に委託して作った非売品の自動車教習用のレコードであるらしい。Ford社はこのようなレコードを複数のレコード会社を通じ1960年代から70年代にかけ量産していたことがわかった。

私はレッド・スタンプ「KUM BACK」はミシガン州デトロイトにあるどこかのプレス工場で製作されたのではと目星をつけた。同じプレス工場であればそこにあったレーベルがホワイト・レーベルに写りこんだと考えられたからだ。
ただこれだけでは決め手にならなかった。
(偶然、オート・パーツを売るウェブ・サイトで発見したFord社が制作した非売品の自動車教習用レコード) →