
ビートルズ・ブートレッグ 55年目の真実
Stories 3 「Whiskey Flats の真相に迫る!」
Section 5 「Whiskey Flat」と「Whiskey Flats」との違い
(Difference of "Whiskey Flat" and "Whiskey Flats")
後にTMOQのK氏はタイトルに「Whiskey Flat」と入れた理由について、「自分の義理の祖母がそこに住んでいたから冗談で、そのタイトルをつけた」と語ったと言われているが、たぶんそのことについては本当のことであろう。
K氏の言う「Whiskey Flat」はカリフォルニア州の(現在は)「Kernville」(カーンビル)というところを指して言っている。その昔は「Whiskey Flat」と呼ばれていたことがあった。
歴史を紐解くと、1858年にこの付近でゴールド・ラッシュがあったそうだ。そのため近くの平地(フラット)に村が形成されたそうである。当初は「ロジャーズビル」とか「ウィリアムズバーグ」と呼ばれていたが、1863年に酒場が開店したことからWhiskey Flat(ウィスキー・フラット)と呼ばれるようになったという。そして1864年には「Kernville」カーンビルと改名されたとのことである。
以上が、一般的な解釈なのだが、過去のアメリカの新聞記事等で検索すると、この「Kernville」を指すときはほとんど「Whiskey flat」という言葉で言い表され「Whiskey Fiats」という言い方はしていない。
しかし、それとは別に「Whiskey Flats」と表現される場所は多数存在するのである。
例えば、ニューヨーク州にある森林公園の「Whiskey Flats State Forest」というところがある。またアイダホ州ソートゥース国有林(Sawtooth National Forest)にあるキャンプ場は「Whiskey Flats Campground」と呼ばれている、モンタナ州のフィリップスバーグ(Philipsburg)にはWhiskey Flatsという開発地区が存在している。また、カナダのユーコン準州ホワイトホースのユーコン川沿いに位置する不法居住地であった場所もそうである。現在は造船のために開発されたが、以前の不法居住地だった頃はWhiskey Flatsと呼ばれていたのだ。これらの地域は「Whiskey flat」で表されることは無く、「Whiskey Flats」で表現されている。
数多くの場所に「Whiskey Flats」という言葉が使われるのはなぜなのか?
それは「Whiskey Flats」という言葉が使われるときは、「人里離れた」とか、「辺鄙(へんぴ)なところ」というニュアンスがあるようである。つまりどこか特定せずに、そのような感覚で漠然と表現するときに使うのである。
WCFの「Whiskey Flats」はまさにその通りで、「人里離れた、辺鄙(へんぴ)なところ」→「どこの場所かは不明」という意味合いがあるのである。
そういったことから、「Live Concert At Whiskey Flats」のほうがブートレッグのタイトルとしてはしっくりした感じがある。むしろ、特定の「カーンビル」を指す「Whiskey Flat」を使った「In Concert At Whiskey Flat」の方が滑稽な感じを受ける。
K氏が冗談で義理の祖母が 住んでいる「Whiskey Flat」にしたという意味は、「Live Concert At Whiskey Flats」というWCFのタイトルを知り、ふとカーンビルのことを思い出し、WCFに対する「ジョーク」として「Flat」にしたということではないだろうか?
「Alive At Last」というタイトルは時にライブ盤に使われるタイトルではあるが、特定の場所とは関係がない。「Last Live Show」というタイトルでは、この場合、本当の音源の内容とは意味が異なっている。特に1965年のシェア・スタジアム・ライブにつけられた「Last Live Show」というのは勘違いされることを望んでつけたようなタイトルである。
「Whiskey Flats」と「Yellow Matter Custard」もタイトルから本当の収録内容が連想できないものにしてある。「Yellow Matter Custard」というタイトルは、後にTMOQがリリースした「Outakes」(同じBBC音源)というタイトルとは明らかに一線を画している。
前セクションでの3タイトルは実はマスタリングもタイトルもすべて、WCF側によるもので、TMOQはそれらを流用したのではないか?
次のセクションでは具体的な「Whiskey Flats」の場所について検証するが、その前に下のマップを見ていただきたい。
↓これはWikipediaに掲載されているビートルズの1964年Noth Aerican Tourの経路図と公演開催地点である。

緑色の地点である8月19日のサンフランシスコ(Cow Palase)から始まり、最終日が赤い地点である9月20日のニューヨーク・シティである。圧倒的に東海岸寄りの地域でのコンサートが多い。
バンクーバー公演のブートレッグが西海岸のブートレッガーによるもの(TMOQ 「Vancouver 1964」 1974年)だったことを考えると、「Whiskey Flats」の音源が東海岸のどこかであることは上経路図からも確率的に高く、だとすると必然的に東海岸のブートレッガーによって作られることとなるであろう。

←この写真は特に東海岸におけるフィラデルフィア近辺の拡大地図である。
①はWCFの拠点であったブルックリン、
②はセクション3で取り上げたTVCのプラントがある場所である。
これらの位置関係、そして上の経路図中にある、この付近の公演場所を見ていただき、次のセクション5と最終セクション6を読んでいただければと思う。