ビートルズ・ブートレッグ 55年目の真実

Stories 3 「Whiskey Flats の真相に迫る!」

Section  3         アナログ・ブートレッグによるアプローチ  (Sound Inspection)  

 今回の検証に資料として下記のいくつかのアナログ・ブートといわゆるコレクターズCDを参考にした()内の整理番号はこのウェブ・サイトで使用している番号で、livedoor-Blogにリンクしているので詳細はリンク先を参照願いたい。         

  1. Alive At Last(TVC1001)(アナログ・ブート) (Flat01
  2. In Concert At Whiskey Flat(TMOQ) (アナログ・ブート)(Flat05
  3. Live Concert At Whiskey Flats(WCF510)  (アナログ・ブート)(Flat11
  4. Last Live Show (TVC101) (アナログ・ブート)(SHEA01
  5. Last Live Show (WCF7001) (アナログ・ブート)(SHEA02
  6. The Ultimate Live Collection, Volume 1 〈Yellow Dog, CD〉
  7. INDIANA STATE FAIR & MONTREAL FORUM〈Misterclaudel, CD〉
  8. HISTORICAL HOLLYWOOD BOWL CONCERTS〈Misterclaudel, CD&DVD〉
  9. 1964 LIVE IN CONCERT A.K.A. WHISKEY FLAT〈Misterclaudel, CD&DVD〉
  10. On Tour In Canada 〈SGT. CD&DVD〉
  11. In The United States 〈SGT. CD&DVD〉
  12. In Concert At Whiskey Flat〈SGT. CD&DVD)

  上記の音源の中では、1及び3、つまりアナログ・ブート(Flat01)と(Flat11)の音が他のアナログ、及びCDよりも音質がクリアで良い。

   もちろんアナログ盤の場合、ある程度のスクラッチ・ノイズはしかたないが、明らかに音の抜けは1と3が上回っている、6以降のCDよりも音質が良いのである。おそらく1993年のYellow Dogは1の「Alive At Last」のアナログ・ソースをうまくノイズ・リダクションし、編集・マスタリングし作られたものだと思われる。以降のCDも基本的に「Alive At Last」の音を利用したか、このYellow Dogソースをもとに、再編集によって制作されたのではなかろうか。

CDは便利であるが、もし上記1と3のブートレッグをお持ちの方はぜひ、アナログの方で聞くことをお勧めしたい。

 では、1と3の(Flat01)(Flat11)とではどのような違いがあるのか、詳しく説明していきたい。1と3を聞くと、1の方が聞きやすいと思う方がいるかもしれない。というのも3は常時ヒス・ノイズが聞こえている、しかもそのノイズは波を打つように周期的である。ただ、音の抜け方(クリアさ)は3の方が良い。それは特に演奏中というより、曲紹介などのMCの時にヴィヴィッドに感じることができるだろう。

  この差はマスタリングにあると思われる。1の方はヒス・ノイズを消すため高音領域を下げて設定した感があり、その分聞きやすい。しかし、もとのマスター・テープの音には3の方が近いのではないだろうか?

  この検証では大いに6と7及び11のCDが大変参考になった。実はインディアナポリス公演も終始、周期的なヒス・ノイズが聞こえているのである。またそれほどではないが10のバンクーバー公演でも多少それと同等のノイズが聞こえてくる。おそらくは、当時のラジオ局が用意した機材での録音では、このようなノイズが入ってしまう限界があったということであろう。インディアナポリス公演の音質を聞いてから、1及び3の音を聞くとむしろ3の方が自然な音に聞こえる。

 しかしながら、編集に関しては収録時間が長い、1の「Alive At Last」のほうが完全なものに近いといえるだろう。

 Side1の最後、ポールの「・・・Lovely・・Thank you」まで収録されており、Side2では冒頭、ポールの「An(d)..With this next song.. から収録されているが、Side1の最後とSide2の最初をつなぎ合わせることで、カットなく聞くことができる。(おそらく6ではそのような編集をしたと思われる)また、1ではSide2のエンディングにおいて、ギターをステージ上においた後のフィードバック音が長く収録されている。

   一方、3(Flat11)のWCF盤ではSide1最後のポールの声は入っていおらず、Side2でもわずかに冒頭のポールの声がカットされている、またエンディングのフィードバック音も短くフェード・アウトする。

  実はここに重要なポイントがある、Flat05のTMOQ盤もWCF盤とまったくは同じ編集の仕方なのである。これが偶然の一致とは到底思えない。WCF盤とTMOQ盤の大元のマスターとなったソースは同じものであるはずだ。

↑写真「Alive At Last」のマトリックスとリイシューで付属したスリック(参照→Flat03/04)、右側のブルースリックは複写であるが、右から2番目のスリックはWCF盤(Flat11)のものと全く同じ。「Alive At Last」のファースト・プレスがスタンプだったのは、WCF側の製作が間に合わなかったから、Flat01やFlat02では急場しのぎにスタンプを作成したのではないか?

     そして、見過ごすことができない点は、1と3の両者の関係は、Last Live Showにおいても似た状況が発生していることである。つまり 4(SHEA01,TVC)と 5(SHEA02, WCF7001)の関係と共通点が多い。

  初めにマトリックスの「TVC」についてだが(参照→SHEA01)、Tracy-Val Corporationというニュージャージー州にある会社のことで、かつてはレコード・プレートの製作サービスを行っていた。このプラントでプレートを制作したときには手書きで「TVC」とマトリックスと共に書かれる。4 (SHEA01)と 1 (Flat01)を製作したブートレッガーはともにTracy-valのプラントを利用した。Last Live Showにおいては、4(TVC,SHEA01)のほうが若干、音質が良いのだが、5 のWCF盤(SHEA02)は収録時間がわずかに長いことからも、どちらかがどちらかのコピー盤ではなく、両者は同じマスター・テープを入手していたはずである。同様にFlat01とFlat11も、、マスタリングは異なっているのだが、どちらも同じマスター・テープから制作されている。そしてどちらのタイトルもWCF側が制作したスリック・カバーを使用したプレス・イシューがある。 

↑参考資料: Oldies45のシングル盤シリーズで、「Love Me Do / P.S. I Love You」(OL151)はTVCのプラントである。

↑Last Live Show(WCF7001,SHEA02 )は若干写真下のLast Live Show(TVC101,SHEA01)よりも音質が劣っているが、収録時間は長い。またスリックは(TVC101,SHEA01)のほうが複写である。

↑写真の「Leon Russell / The Master Of Space And Time」は1971年制作のブートレッグ。レーベルの形状や印刷から、右側「Last Live Show」と同じブートレッガーであろう。

 そしてTMOQによる同タイトル「Last Live Show」(LLS101, SHEA08)は数か月後に、遅れてリリースされた。やはりTMOQ盤の収録時間もWCF盤(SHEA02)よりは短く、4(SHEA01)か 5(SHEA02)のどちらかのソースをもとに制作したはずである。

←写真左 Last Live show(SHEA08)TMOQによるリリースは1971年に入ってから、4(TVC101,SHEA01)のリリースから数か月以上の経過があったと思われる

→写真右 1970年10月の「In Concert At Whiskey Flat」制作後、なぜか1971年になってから「In Atlanta Whiskey Flat」とタイトルを代えリイシューされた。「A Pig’s Tale」(2021年)によると単なる「Mistake」であったそうだ。

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