ビートルズ・ブートレッグ 55年目の真実

                                           Stories 3 「Whiskey Flats の真相に迫る!」

 Section  4            TMOQ盤はなぜ音質が悪いのか?(The reason of poor sound by TMOQ )

    1970年当時の状況を考え、3つのアナログブートを比較したい。前セクションで、1.「Alive At Last」(Flat01)と3.の「Live Concert At Whiskey Flats」(Flat11)が音質と収録時間で優れていることを述べたが、2.TMOQ盤(Flat05)は2つに比べ、かなり悪い音質である。

下の波形を見ていただきたい。これはTMOQ盤(マトリックス:OPD-19 70-417F / OPD 67-2 70-418F)のSide1、冒頭の部分の波形である。(歓声が聞こえ始めてからの冒頭10秒間)

←写真 こちらは上記波形をわざと3.5倍に増幅させてみた。赤線は波の山が認められる部位。冒頭10秒間で約9回繰り返されいている。

 冒頭から始まる歓声が波を打つように聞こえるのはお分かりだろうか?波形で表現すると、なだらかな丘のような放物線を描いており、その丘は約9個確認できる。これは前セクションでも触れた、周期的なヒス・ノイズではあるのだが、なぜか非常に強調された状態を示している。Flat11でも同じようなノイズを聞くことができるが、Flat11では、これほどまでに強弱の波は無く、強調されてもいない。またFlat01ではほとんどこのノイズは聞こえない。

今度は同じ部分のFlat11の波形を見ていただきたい(写真下)。Flat05にみられるような、丘(山)がつらなっているような感じはない。おそらくはTMOQ盤では随分と助長(増幅)されてしまったのか、再生機器とかテープの物理的な問題かもしれない。

←写真 「Live Concert At Whiskey Flats」(WCF510)の冒頭約10秒間の波形。

ちなみにFlat01は以下のような波形になる。(写真下)

←写真 「Alive At Last」(TVC1001)の冒頭約10秒間の波形。

 「Alive At Last」(Flat01)では高音領域を抑えヒス・ノイズをうまく消しているように思える。聞いた印象はTVC盤はLast Live showでもそうだが、非常にうまいマスタリングをしている。

さて、どうしてTMOQ盤はこのような悪い音質なのか?

 まずここで言えることは、TMOQ盤において冒頭よりこのノイズを発生させているということは、Flat01「Alive At Last」からディスク・コピーされたとは考えづらいばかりではなく、TMOQ盤からディスク・コピーされたものがWCF盤ということも考えられない。

 WCFは音質が悪いという先入観からなのか、TMOQ盤からコピーされたと勘違いされがちだが、音を比較し聞けば明らかで、TMOQ盤からコピーした音はどんなに優れた処理をしてもWCF盤のようなクリアな音質にはならないであろう。

では逆に、TMOQ盤がWCF盤よりコピーされたとは考えられないだろうか?

 なぜならWCF盤とTMOQ盤の編集は前述の通りほぼ同一で、前セクションに書いたように、Side1のエンディング、Side2の冒頭とエンディングの収録状態はTMOQ盤とWCF盤とではほとんど同じだからだ。

 ところが、この推測も2つの理由から、否定されてしまう。

 TMOQが当時使用した「マトリックス:OPD-19 70-417F / OPD 67-2 70-418F」のスタンパーは写真が残っているのである。この写真は「A Pig's Tale」(2021年)に掲載された。この写真で判断するとスタンパーが製作されたのは1970年10月である。Flat05をlivedoor-Blogに掲載したとき書いたが(参照→Flat05)、1970年11月時点で日本でもこの「In concert At Whiskey Flat」は発売されており、購入したという証言は多数ある。

 次にFlat11のWCF盤であるが、使用されたスリックはUS盤「Christmas Albumのカバーより複写され使われている。US盤「Christmas Albumは1970年12月のリリースであった。よって、時系列的にTMOQがWCF盤ディスクよりコピーすることは不可能であったといえる。

 またもう一つの否定理由は、仮にWCF盤からディスク・コピー、あるいは、仮にそのマスターから一回ダビング・コピーしたくらいでは、ここまで劣化した音質にはならないはずである。あまり条件の良くない環境でコピーされ、一回劣化した音質に対して、イコライジングし、ヒス・ノイズに近い高音領域が増長されたか、あるいは前述の通り何か物理的な原因があるかもしれない。

 となると、WCFがマスタリングしたテープのコピーが制作前にTMOQへ渡った」ということぐらいしか考えられないのである。

(ただし、それは渡されたのか、売買されたのか、あるいは流出であったのか、そして複数の仲介者がいたのかなどは不明であるが・・・)

ここでつぎの3タイトルについて考えて頂きたい。

  In (Live) Concert At Whiskey Flat(s)   /   Last Live Show    /   Yellow Matter Custard

これら3つのタイトルは1970年秋から翌年1971年9月までの約1年間に発売されたタイトルで、なぜかWCF盤とTMOQ盤共に同じタイトルがついているブートレッグである。

そしてこれらの共通点は、すべてWCF盤は音質で劣っていないという点である。

 1993年にGreat Dane Recordsが発売した9枚組CDBOXのライナー・ノーツの中に書かれている話だが、「Yellow Matter Custard」は先に発売したTMOQ盤よりもWCF盤の方の音質が優れていることが指摘されている。このライナー・ノーツの中では、「WCF盤の音質はやや勝っており、異なるマスターから作られた」としている。

そもそもこれもTMOQ側へのテープの供給元はWCFだったのではなないだろうか?

←写真 1993年に発売されたGreat Dane Recordsによる9枚組CDBOX 中に豪華なブック・レットがあり、BBC音源の歴史について非常に詳しく書かれている。そこには「WCF盤はTMOQよりも後発であったが、別のテープから作られたためかやや優れた音質だったと記載がある。

↓写真 「Yellow Matter Custard」

WCFが制作した初版「Yellow Records」盤は盤質が悪く、ノイズが多いのだが、後に同スタンパーを使用し、良好な盤質でプレスされたリイシュー盤(Black Gold Concerts)で聞くと確かに、TMOQ盤より良い音質であったことがわかる。

  この3タイトル全て実は、WCFがマスタリングしたテープがTMOQのマスターになっていたのではないか?

 そしてタイトルもWCF側が先に決めたタイトルであったかもしれないのである。

「In Concert At Whiskey Flat」は最初に発売したTMOQのタイトルであった。その後発売したWCFのタイトルは「Live Concert At Whiskey Flats」であった。この件に関して、TMOQのタイトルを真似したWCFが誤植したという見方をする向きがあるが、そうではない可能性の方が高い。

 なぜなら、むしろ、「Flats」とする方がその意味合いに即して正しいからである。つまりタイトルもオリジナルはWCF側だった可能性があるのである。

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